この記事の要約
- お盆の帰省で親と話すときは、いきなり相続や遺言から始める必要はありません。
- まずは今の暮らしや困っていることを知り、そのうえで医療・介護・住まい・実家・財産について、親が話せる範囲から少しずつ確認していきます。
- 一度の帰省ですべてを決める必要はありません。
久しぶりに実家へ帰ったとき、
「前より歩くのがゆっくりになったな」
「なんだか少し小さくなったように見える」
「同じ話を何度かしている気がする」
そんな親の変化に気づくことがあります。
まだ、元気そうではある。
でも、
「この先、一人で暮らしていけるかな」
「入院したらどうするんだろう」
「実家は、このままでいいのかな」
「もしものときの話も聞いておいた方がいいのかも」
と、少し心配にもなる。
そう思っても、いざ親を前にすると、
「何から聞けばいいんだろう」と迷う方は少なくありません。
相続の話から始めたら「財産をあてにしてるんじゃないか」と思われそう。
遺言書の話をしたら「縁起でもない」と嫌がられるかもしれない。
介護の話をしたら「まだそんな年じゃない」と言われそう。
親子だからこそ、話しにくいことがあります。
「気になるけど聞けない」
そんな状態を大切にしてもよいのではないかと私は思うのです。
まずは、
今、親がどんなふうに暮らしているのかを知る。
そこから始めてみませんか。
目次
親と何を話す?|まずは「今の暮らし」を知ることから
親のこれからが気になると、子どもの側には「今のうちに確認しておかなければ」という気持ちが生まれます。
でも、その気持ちが強くなるほど、
「家はどうするの?」
「貯金はいくらあるの?」
「遺言書は書いてある?」
「介護になったらどうする?」
という「確認」ばかりになってしまうことがあります。
子どもにとっては心配から出た言葉でも、親からすれば、
「子どもにそんな心配をされたくない」
「自分でできるうちは、自分でなんとかしたい」
と感じるかもしれません。
親には親の時間があります。
今も楽しみにしていることがあり、続けたい暮らしがあり、自分で決めたいことがあります。
相続や遺言を話す前に、まずはその人の「今」を知るところから始めてみては、どうでしょう。
たとえば、
- 「最近、毎日どんなふうに過ごしてる?」
- 「買い物はどうしてるの?」
- 「病院には今も同じところに通ってる?」
- 「最近、楽しみにしてることってある?」
- 「何か困っていることはない?」
そんな会話です。
特別な家族会議でなくても構いません。
一緒にお茶を飲んでいるときや、買い物へ行く途中の何気ない会話から、少しずつ分かってくることがあります。
親のことを考えるとき、私たちはつい、
「これから何ができなくなるか」
に目が向きます。
けれど、その前に知っておきたいのは、
今、その人がどう暮らしているのか
です。
たとえば、
- 普段、どんな一日を過ごしているか
- 買い物や通院にはどうやって行っているか
- 近所に話をする人がいるか
- 困ったときに頼れる人がいるか
- どんなことを楽しみにしているか
- 今の家で、これからも暮らしたいと思っているか
- 最近、少し大変になってきたことはないか
こうしたことを知っていると、いざ何かあったときにも、親が大切にしてきた暮らしを想像しながら考えやすくなります。
親を見るときに、
「まだできるか、もうできないか」
だけで見ない。
今、その人が何を大切に生きているのかを見る。
それも、これからへの備えの一つだと私は思います。
帰省したとき、親と確認しておきたいこと
今の暮らしが少し分かってきたら、もしものときに困らないための情報も、話せる範囲で確認しておくと安心です。
一度ですべて聞く必要はありません。
① 医療・緊急時に確認しておきたいこと
たとえば、
- かかりつけ医や通院先
- 普段飲んでいる薬
- 緊急時に連絡してほしい人
- 親が頼りにしている親族や友人
などです。
突然の入院や体調不良のとき、家族が何も知らないと、どこへ問い合わせればよいのか分からず困ることがあります。
「何かあったとき、まず誰に連絡したらいい?」
くらいのところから始めてもよいでしょう。
② 住まい・介護について話しておきたいこと
「介護になったらどうする?」と聞かれると、親もすぐには答えられないかもしれません。
そんなときは、
「できれば、この家に住み続けたい?」
「もし少し手伝いが必要になったら、どんなことなら頼みやすい?」
という聞き方もあります。
親自身、まだ考えたことがない場合もあります。
「分からない」
「今は決めたくない」
という答えも、その人の今の答えです。
③ 実家・財産は「全部」聞かなくてもいい
親の財産について、子どもがすべて把握しておかなければならないという決まりがあるわけではありません。
親子であっても、親の財産は親自身のものです。
だから、
「預金はいくらあるの?」
「全部教えて」
と詳しい金額を聞き出そうとするより、
まずは、
- 不動産を持っているか
- 実家の名義はどうなっているか
- 預貯金や保険、証券などがあるか
- 借入れがあるか
- 重要な書類はどこに保管しているか
- 遺言書を作っているか
- 困ったときにどこへ問い合わせればよいか
など、「何があるか」「どこにあるか」という手掛かりから確認する方が、話を始めやすいこともあります。
大切なのは、親が話せる範囲を尊重することです。
通帳や印鑑を子どもが持っているからといって、親の財産を自由に動かせるわけでもありません。
親本人の意思と、家族として知っておいた方がよい情報は、分けて考える必要があります。
④ 遺言書とエンディングノートはどう違う?
親との話の中で、
「エンディングノートを書いておいたらいいんじゃない?」
という話になることもあるでしょう。
エンディングノートは、
- 連絡先
- 通院先
- 重要書類の場所
- これからの暮らしについての希望
- 家族へ伝えておきたいこと
などを整理するために役立ちます。
自分自身が、これからどう暮らしたいのかを考えるきっかけにもなります。
一方、遺言書とは役割が異なります。
財産を誰にどのように承継させたいのかなどについて、法的な効果を持たせたい場合には、法律で定められた方式に従った遺言書など、別の準備が必要になります。
エンディングノートを書けばすべて解決するわけでも、遺言書を書けばすべて安心というわけでもありません。
「何を伝えたいのか」
「何に備えたいのか」
によって、必要な準備は変わります。
相続・介護の話をどう切り出す?|一度ですべて話さなくていい
久しぶりに親と会えるお盆。
だからこそ、
「この機会に全部聞いておかなければ」
と思うかもしれません。
でも、一度の帰省で全部を話す必要はありません。
今日は、最近の暮らしの話。
次に会ったときは、病院や薬の話。
また別の日に、実家のこと。
そんなふうに、少しずつでよいのです。
一度で結論を出すことよりも、
「これからのことを話しても大丈夫」
という関係をつくる方が、長い目で見れば大切なこともあります。
親にも、
「まだ考えたくない」
「分からない」
「もう少しこのままでいたい」
という気持ちがあります。
考えが変わることもあります。
子どもの側が安心するために、親に答えを急がせない。
それも、家族でこれからを考えるときに大切にしたいことです。
家族だからこそ、相続や遺言の話が難しいこともある
私は司法書士として、相続や遺言に関するご相談に関わってきました。
法律上、確認しておいた方がよいことが分かっていても、実際の家族の中では、なかなか話せないことがあります。
「財産目当てだと思われたくない」
「親の死を待っているように思われそう」
「昔から、この話題を出すと機嫌が悪くなる」
そんな気持ちがあれば、正しい知識があるだけでは話は進みません。
一方で、気持ちを整理するだけでは、不動産の名義や遺言、相続手続きといった現実の問題は残ります。
だから私は、
法律として確認することと、家族の気持ちとして考えることを、いったん分けてみる
ことが大切だと思っています。
どちらか一方だけで考えなくてもよいのです。
親のこれからを考えると、自分のこれからも見えてくる
親の老いを感じると、
「この人は、これからどう生きたいんだろう」
と考えることがあります。
その問いは、いつの間にか自分にも返ってきます。
私は今、どんな暮らしをしたいんだろう。
この仕事を、これからも続けたいんだろうか。
どこで暮らしたいんだろう。
何に時間を使いたいんだろう。
これから、誰とどんな関係を大切にしたいんだろう。
親のこれからについて考えることは、親のためだけの時間ではないのかもしれません。
自分自身のこれからを見直す入口になることもあります。
まとめ|備えることは、「親を知ること」から始めてもいい
親のこれからが気になったとき、
介護のこと。
相続のこと。
実家のこと。
遺言のこと。
考えておきたいことはたくさんあります。
けれど、一度ですべて確認し、すべて決める必要はありません。
まず、
「最近、どんなふうに暮らしてる?」
と聞いてみる。
今、何を楽しみにしているのか。
何に困っているのか。
これからも続けたいことは何なのか。
親を「これから支えなければならない人」としてだけではなく、一人の人として知り直してみる。
そこから、必要なことを一つずつ話していけばよいのだと思います。
備えることは、書類を作ることや、財産を確認することだけではありません。
その人が今、どんな人生を生きているのかを知ることも、大切な備えの一つです。
よくある質問
親に相続の話をするのは、いつがよいですか?
決まった年齢や時期があるわけではありません。
親も子どもも落ち着いて話せるときに、いきなり財産や遺言の話から始めず、最近の暮らしや困っていることを聞くところから始めてもよいでしょう。
一度で話を終わらせる必要もありません。
親が相続や遺言の話を嫌がる場合はどうすればよいですか?
その場で答えを出してもらう必要はありません。
「今日はここまでにしよう」といったん止めて、住まいや通院、緊急時の連絡先など、話しやすいテーマから始める方法もあります。
親がなぜ話したくないのかにも、その人なりの理由があります。
エンディングノートを書いてもらえば十分ですか?
エンディングノートと遺言書は役割が違うため、エンディングノートだけで十分とは限りません。
エンディングノートは、親の希望や大切な情報を整理するために役立ちます。
ただし、遺産の分け方について、遺言書と同じ法的な効果が当然に生じるものではありません。
何を伝えたいのか、何に備えたいのかによって、必要な準備は異なります。
親の財産はどこまで把握しておくべきですか?
親の財産を、子どもがすべて把握しておかなければならないという決まりはありません。
まずは詳しい金額より、不動産や預貯金、保険、借入れ、重要書類、遺言書などが「あるか」「どこにあるか」を、親が話せる範囲で確認するところから始めてもよいでしょう。
親が認知症になってからでも遺言書は作れますか?
認知症と診断されているからといって、一律に遺言書を作れないわけではありません。
一方で、遺言を作成した時点で、内容やその意味を理解し、自分の意思で決めることができていたかが問題になることがあります。
本人の状態や遺言の内容、作成方法などによって判断が異なるため、遺言書の作成を考える場合は、専門家に相談しながら検討するとよいでしょう。
親のこと、家族のこと、相続のこと。何から整理すればよいか分からないときに
ご相談について
親の介護、相続、遺言、実家のこと。
一つひとつは別の問題に見えても、家族の気持ちやこれからの暮らしと重なり、何から考えればよいのか分からなくなることがあります。
小高司法書士事務所の「はじめての相談」では、今起きていることを整理し、
- 法律として確認した方がよいこと
- 家族で考えること
- 今すぐ決めなくてもよいこと
を分けながら、次に何をすればよいのかを一緒に整理します。
すべてを決めてから相談する必要はありません。
「何を相談したらよいのか分からない」というところからでも大丈夫です。
相続登記や遺言、不動産の名義などについては、司法書士として確認できることがあります。家族間ですでに争いがある場合や、税務など他の専門分野の判断が必要な場合は、内容に応じて弁護士、税理士など適切な専門家への相談をご案内することがあります。
法律の問題だけでなく、家族関係や気持ち、今後の暮らしまで混ざり、どこから考えればよいか分からない方は、「はじめての相談」で一緒に整理することもできます。
この記事を書いた人
司法書士・心理カウンセラー こたか真子

滋賀県大津市を拠点に、人生の節目にある方の法律の問題と気持ちを一緒に整理し、ここからの人生を見直していく一歩を支援しています。
相続、遺言、不動産登記などの法律実務に加え、心理カウンセラーとして、手続きの背景にある家族関係や気持ち、これからの人生についての相談にも対応しています。
人生に寄り添う、かかりつけカウンセラー&司法書士
参考情報・ガイドライン
e-Gov法令検索: 民法(明治二十九年法律第八十九号)
法務省: 自筆証書遺言書保管制度「01 遺言書保管制度とは?」
大阪法務局: エンディングノート~あなたに届け、わたしの想い~
閲覧日:2026年8月7日
免責・注意事項
この記事は、2026年8月7日時点の法令および公表資料をもとに、親とのこれからの話し合い、相続、遺言、介護、実家・財産の確認に関する一般的な情報をお伝えするものです。
実際に必要となる手続きや法的判断は、親御さんの状況、家族関係、財産や不動産の内容、遺言書の有無・内容などによって異なります。
個別の事案については、司法書士、弁護士、税理士など、相談内容に応じた専門家へご相談ください。




